『鹿鳴館』のシャンデリアを一目見ようと、東京・江戸川区平井にある燈明寺(平井聖天)へ。案内されたのは燈明寺・金堂の2階でした。
『鹿鳴館』のシャンデリアは、残月のような清明な美しさでした。
想像していたよりも質素な印象です。豪華さはありません。けれど、見れば見るほど、素敵なデザインだな〜って思えてきます。
明治維新後の日本に財政的な余裕があったとは到底思えません。その苦しいなかで精一杯の力を見せるために、最高の職人たちを集め、粋を極めたのでしょう。
スズランの花のような可憐な電球の笠。花びらのようにやわらかいカーブを描くこのガラスは、一つひとつ手作りなのだそうです。
中央の青銅の腕木のデザインは派手な主張はしていませんが、気品があります。この青銅の淡い薄緑色は長い年月をかけてついたもの。明治、大正、昭和、平成と4つの時代をくぐり抜けてきた証なのです。
きらびやかで豪奢なイメージのある『鹿鳴館』ですが、実際はこのような慎ましやかな美で飾られていたのかもしれませんね。
お寺とシャンデリアなんて、奇妙な取り合わせだなぁと思っていたのですが、実際にあの空間で目にすると、お寺の装飾物としても違和感なくとけ込んでいるんですね。
シャンデリアという西洋のモノに、日本の装飾技術が使われているからかもしれません。
あるいは、印度や中国、日本などの異文化が混じり合うお寺という空間には、ジャンルの違うものも包み込む大きさがあるからでしょうか。
『鹿鳴館』のシャンデリアが燈明寺に渡った経緯は定かではないそうです。昭和15年に『鹿鳴館』が解体された折、調度品類が競売にかけられ、その際に何かの縁でこのお寺に引き取られたとのこと。
引き取られた場所がお寺で良かったのかもしれません。本堂のように高い天井と広さがあるところだからこそ、存在感のあるシャンデリアを保存し、飾っておけたのだろうと思います。
しかし、この歴史の遺産ともいうべきシャンデリアを預かるお寺は大変です。掃除をするにも、わざわざシャンデリアの下に丸く足場を組んで、一つひとつ慎重に磨かねばならないのだとか。維持するのは相当なご苦労があると思います。
『鹿鳴館』の遺産を大切に保存して下さっている燈明寺さんに感謝!
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【燈明寺(平井聖天)】
東京都江戸川区平井6-17-30
03-3618-0514
JR平井駅から徒歩8分ぐらい
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→ 鹿鳴館のシャンデリアをたずねて〜燈明寺〜 その1もご覧ください
(撮影:2007年11月)
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