『鹿鳴館』といえば、三島由紀夫作の戯曲小説のタイトルとしても有名ですよね。劇団四季の舞台をはじめ、映画やドラマにもなっているのでご覧になった方も多いはず。
緊張感をはらんだ美しい文体は文学作品としてもオススメ!
文庫本にもなっているので、『鹿鳴館』や文明開化、明治初期の歴史に興味のある方は、ぜひお読みになってみてはいかがでしょうか。
三島由紀夫の戯曲『鹿鳴館』。どんな内容かというと・・
舞台は明治19年11月3日。天長節の夜会が『鹿鳴館』で開かれようとしている一日のできごとが描かれます。明治19年といえば、外務卿井上馨の失脚以前。まだ鹿鳴館外交が華やかだった時代ですね。
物語の主人公は、影山伯爵とその夫人、朝子。朝子のかつての恋人で民権運動の闘士、清原。清原と朝子の息子、久雄。この4人の愛憎に、鹿鳴館を舞台とする当時の政治、外交、民権運動がからんで展開します。
男女のあいだの偽りと本音、政治における欺瞞と理想、老獪さと純粋、2つの世界がシンクロするとき、一夜の悲劇が幕を開けるのです。
ラストシーンで、影山伯爵と朝子は、お互いの感情を偽りの仮面で隠し、虚飾でつくりあげた『鹿鳴館』で偽りのワルツを踊ります。
「隠すのだ。たぶらかすのだ。外国人たちを。世界中を」
「世界にもこんないつわりの、恥知らずのワルツはありますまい」
愛情と憎悪、母の情、かけがえのないものの喪失感、誇り、それらすべてを仮面の下に押し隠しての哀しいダンス・・・。
この三島由紀夫の『鹿鳴館』は、不平等条約の改正という悲願と、そのためにはどんなに嘲笑されようとも踊り続ける…、そんな明治時代の人々の覚悟と矜恃へのオマージュのようでもあり、また、その滑稽さを一夜の悲劇としてあぶりだしているようでもあります。
主人公の影山伯爵のモデルは、『鹿鳴館』建設を推し進めた井上馨その人。鹿鳴館外交の光と影が物語を通じて伝わってきますね。
また、この戯曲『鹿鳴館』にも、登場人物たちが夜会の準備をするなかで、“給仕が天井中央のシャンデリアに燈火を灯す”というシーンが出てきます。まさにそれが、東京・平井の燈明寺にあるシャンデリア(下の写真)なんですね!
→ 鹿鳴館のシャンデリアをたずねて〜燈明寺〜 その1
→ 鹿鳴館のシャンデリアをたずねて〜燈明寺〜 その2 を参照
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鹿鳴館の歴史
鹿鳴館跡〜夢の跡をたずねて〜
鹿鳴館の姿を求めて〜江戸東京博物館〜
鹿鳴館のシャンデリアをたずねて〜燈明寺〜その1
鹿鳴館のシャンデリアをたずねて〜燈明寺〜その2
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